Yoshida Hiroshi
Yomei Gate
Showa 12 (1937)/
今月の一枚は、現在、小杉放菴記念日光美術館で開催中の「木版画で旅するにっぽんの風景」展に因んで、吉田博の「陽明門」をご紹介いたします。
寛永12年(1635)に造営された陽明門は、入母屋造(いりもやづくり)に唐破風(からはふ)を備え、508体の彫刻を施し、金や極彩色で彩られた壮麗さは、徳川幕府の威厳を示すものであった。吉田は、日光を度々訪れており、昭和12年には日光に取材した6点の版画を制作している。日光を象徴する「陽明門」の制作にあたり、96度という驚くべき回数の摺りを重ねている。吉田の版画の特徴は、何度も色を重ねることによって、水彩画のような透明感、陰影や微妙な色調を表現するという技法にあり、吉田の研究の成果と摺師の努力が最も表れた作品である。
(『「美しき日本の風景 ー川瀬巴水と吉田博を中心としてー』より抜粋)
公益財団法人 平木浮世絵財団菱川師宣から橋口五葉や伊東深水という近代版画に至るまで、近世以降の版画の歴史をたどることが出来るように蒐集されたコレクションです。約6000点の所蔵作品には、重要文化財11点、重要美術品238点を含み、その質の高さは内外に知られています。